「直線裁ち」「直線縫い」「反物で服作り」「昔の人の知恵を活かす」というのは、オーガニックというかナチュラルというのか、ある種ポリシーを伴うことが多い。この石徹白洋品店もそうである。写真を見ると、シンプルででもとても素敵だ。が、実際作ってみるとちょっと、おデブさんのような標準サイズから外れる者にはなかなか厳しかったりすることもある。上手く着こなしてる人もいるので、センスもあるだろうが「慣れ」という要素も大きいような気がする。でもやっぱり「作るのが楽そう」なのでついつい試してみてしまうのである。
で、その石徹白洋品店のサイトを探して、そこで売っていた作り方の冊子を買ったのは、8月頭のことでした。あれやこれややってる間に10月になってしまったが、ようやく完成。洋装ががまだ本格化する前に、反物で試行錯誤して作ったであろう、生地を無駄にしない直線裁ちのシャツで「越前シャツ」というらしい。「この本を作るために、1着の越前シャツを手縫いで作りました。洋服のシャツを知っているだけに、この和服シャツは、パーツが細かく、複雑で、いかに考え尽くされた裁断で作られているのかということに、改めて驚きを感じました。そして正直なところ、洋裁学校を経て洋服作りに慣れてしまった私は、この作り方で1着のシャツを作る気概を持つ人が、今の日本にどれくらいいるだろうか、と途方に暮れるような気持ちになりました。ミシンもなく、手縫いで、着尺(35㎝程の布・着物を作る幅の布)を使ってシャツを作るということがどれだけ大変かということを思い知ったのです。(以下略)」と書いておられるが、途方に暮れなくても結構いると思うなぁというのが正直な気持ちである。和裁をしている方は苦も無いだろうが、それは別としても、私のような「お裁縫永遠のビギナー」にとっては、最初にして最大の関門は「印付け」なんである。本を見ながら見よう見まねで浴衣を縫った時、一番有難かったことは「和裁というのは都度都度、印をつけたり測ったりしながら縫っていくものなんだなぁ」と思えたことである。型紙を布にあてて印をつけて、それに合わせて切る、という感じではない。もちろん、身丈とか袖丈とか、最初にある程度決まった長さには裁断するのだが、折りたたんで真っ直ぐ切ればいい。洋裁は先に型紙を当てて印をつけ、それに沿って切る。私に取っての最難関は「印付け」で、本人は慎重に印をつけているつもりなのだが、必ずずれている。「合い印」が合わないのです。曲線もあるからグズグズ引っ張っていると布が伸びて益々合わなくなる。直線裁ちだと、縫う時に揃えてまち針で留めて縫えばいいので、その点この上なく気楽です。